公正証書遺言とは、公証人の関与を受けて作成する遺言書です。
もっとも確実であり無効になりにくい遺言方式である一方で、費用がかかります。

公証役場の手数料

公正証書遺言を作成する場合には、公証役場の手数料が発生します。

公証役場にかかる基本の報酬は、次の表で算定されます。

なお、表内の「目的の価格」は財産総額ではなく、遺言書で財産を渡す相手ごとの財産の価額です。

(公証人手数料令第9条別表)

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

この表から算定した金額のほか、 財産総額が1億円以下のときは、「遺言加算」として別途1万1,000円が加算されます。

また、遺言公正証書の原本枚数が3枚を超えるときは、用紙代として超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。
さらに、公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、手元にはこの原本の正式な写しである「謄本」や「正本」が交付されますが、これらの交付にそれぞれ1枚当たり250円の手数料が必要です。

なお、遺言者が入院中であるなど公証役場まで出向けない場合には、公証人に病院などに出張してもらうことが可能です。
この場合には、上の表から算定された手数料が50%加算されるほか、公証人の日当(1日2万円、4時間まで1万円)と、現地までの交通費がかかります。

【例】遺言書で、妻に2000万円、子供に1000万円×3人分を相続させる場合

  (1)公証役場で作成

  a 妻の手数料=23,000円

  b 子供3人の手数料=51,000円(17,000円×3)

  c 遺言加算料=11,000円

  d 証人2人分の日当=20000円

  a~d合計=105,000円

(2)公証人に来てもらい作成

a 妻の手数料=23,000円+50%=34,500円

b 子供3人の手数料=51,000円+50%=76,500円

c 遺言加算料=11,000円

d 証人2人分の日当=20,000円

e 公証人の日当=20,000円+交通費

a~e合計=162,000円+α

作成サポートを依頼した専門家報酬

公正証書遺言の作成に関して、弁護士、司法書士や行政書士といった専門家へサポートを依頼した場合には、専門家への報酬が費用としてかかります。
報酬の相場は、おおむね10万円から30万円程度で、専門家によっても異なります。

ただし、専門家の手数料は法定されているわけではないため、依頼先の専門家によって異なります。
また、内容が複雑である場合などには別途費用が加算される場合もあります。

実際にサポートを依頼する際には、あらかじめその専門家の報酬やサポート範囲を確認しておくとよいでしょう。

証人の日当

公正証書遺言を作成する際には、公証人のほか、2名以上の証人に立ち会ってもらう必要があります。

証人には特別な資格は必要ないものの、次の者は証人になることができません。(民法974条)

1.未成年者

2.推定相続人(遺言者が亡くなったときに相続人になる予定の人)及び受遺者(遺言書で財産を渡す相手)並びにこれらの者の配偶者・直系血族

3.公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人

証人には、作成しようとする遺言の内容をすべて知られてしまいます。
そのため、信頼できる人を選ぶ必要があるでしょう。
しかし、頭に浮かんだ人の大半が、このうち、2.に該当してしまう場合も多いかと思います。

証人の適任者が周りにいない場合には、公証役場から紹介をしてもらうことも可能です。
紹介を受けた場合には、証人の日当が1人あたり1万円前後かかります。

なお、公正証書遺言の作成サポートを専門家に依頼している場合には、専門家側で証人を手配してくれることもあります。
この場合には、作成サポートの報酬に証人の日当が含まれているのかそれとも別途費用が必要であるのか、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

必要書類の取得費用

公正証書遺言の作成には、さまざまな書類が必要です。
必要となる書類は作成しようとしている遺言の内容によって異なりますが、次の書類が必要となることが多いでしょう。
実際に作成する際には、サポートを依頼している専門家か公証役場に必要書類をあらかじめ確認することをおすすめします。

  • 遺言者の戸籍謄本
  • 遺言者の印鑑証明書
  • 遺言者と遺産を渡す相手との続柄がわかる戸籍謄本(遺産を渡す相手が親族である場合)
  • 遺産を渡す相手の住民票(遺産を渡す相手が親族ではない場合)
  • 遺産を渡す法人の全部事項証明書(法人に遺産を渡す場合)
  • 遺言書に記載する不動産の全部事項証明書、固定資産税課税明細書
  • 遺言書に記載する預貯金の通帳

これらの書類を取得するために要する費用は、おおむね数千円から数万円程度です。
遺産を渡す相手が多い場合や遺言書に記載する不動産の数が多い場合には取得すべき書類も増えるため、費用が多くかかる傾向にあります。

公正証書遺言を作成する際の注意点

1.元気なうちに作成する

「私は元気なので、遺言書を作るのはまだ早い」という方は少なくありません。
しかし、公正証書遺言は元気なうちに作成することを強くおすすめします。

仮に重い認知症になったり意思疎通が困難な状態となったりしてしまうと、有効な遺言書を作成することは困難となります。
また、一般的には高齢になるほど判断能力が衰える傾向にあるため、遺言書を作成した時期が高齢であればあるほど、遺言によって自分の取り分が減った相続人などから遺言の無効が主張されるリスクが高くなるためです。

遺言書を作成する時期を逸してしまい、遺言書の作成ができなくなってしまわないように、遺言書の作成は元気なうちに行うことをおすすめします。

なお、遺言書が複数通存在する場合には、内容にもよりますが、もっとも新しい日付のものが有効とされます。
そのため、公正証書遺言の作成した後に、遺産を渡したい相手などに変更が生じ、遺言書の内容を変更したいと考えた場合には、新たに遺言書を作成することで遺言内容を更新することが可能です。

2.遺留分に配慮する

公正証書遺言を作成する際には、遺留分について理解しておかなければなりません。
遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。

遺留分割合は、それぞれ次のとおりです。
なお、兄弟姉妹や甥姪に遺留分はありません。

  • 配偶者または子が相続人である場合: 2分の1
  • 父母や祖父母など直系尊属のみが相続人である場合:3分の1
  • 兄弟姉妹や甥姪:遺留分なし

相続人が複数いる場合には、上記の遺留分割合に、法定相続分という相続の割合を乗じたものが、最終的な遺留分割合になります。

誤解している人も少なくありませんが、遺留分を侵害した遺言書も有効です。
しかし、遺留分を侵害した内容の遺言書を遺せば、相続が起きた後で遺留分を侵害された相続人から遺産を多く受け取った者などに対して「遺留分侵害額請求」がなされ、トラブルとなる可能性があります。

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額を金銭で支払うよう請求することです。
この請求がなされると、請求を受けた者は遺留分相当額の金銭を実際に支払わなければなりません。

しかし、遺産の大半が不動産など換価の難しいものである場合には、支払い原資の確保に苦慮する事態ともなりかねないでしょう。
このような事態を避けるため、公正証書遺言を作成する際には遺留分について正しく理解をしたうえで、遺留分に配慮した遺言書を作成するなど、別途検討をすることが重要です。

3.付言事項を活用する

公正証書遺言には、本文のほかに、付言事項を記載することができます。
付言事項とは本文の後に付け足す手紙のようなものであり、法的な拘束力はありません。

たとえば、「今までありがとう」など感謝の想いや、「これからも兄弟仲良く暮らしてください」など遺言者の希望を記載することが多いでしょう。

付言事項に法的効果はないものの、うまく活用することで相続争いを防ぐ効果が期待できます。
たとえば、やむを得ず遺留分を侵害する遺言を作成した場合に、その理由を記すことなどが挙げられます。

専門家にサポートを依頼する

公正証書遺言は、公証役場と直接やり取りをすることで、行政書士などの専門家に依頼することなく作成することも可能です。
しかし、専門家のサポートを受けて作成したほうがよいかと思われます。
なぜなら、公証役場はあくまでもすでに決まった内容を公正証書にする場であり、遺言内容についてのアドバイスは受けられないことが一般的であるためです。

たとえば、長男と長女がいたとして、長男に全財産を相続させる内容の遺言書を作ることはできます。
ただし、このような遺言書を作れば、長女から遺留分侵害額請求がなされてトラブルに発展する可能性があることは先ほど解説したとおりです。
直接公証役場とやり取りをした場合には、「この内容は遺留分を侵害していて、将来トラブルになるリスクがありますが本当にこれでよいですか?」などというアドバイスは受けられないことが多いでしょう。

法的に有効な遺言書を作成したとしても、将来トラブルの原因となるケースは少なくありません。
そのため、将来に問題を残さないためには専門家のサポートを受けて公正証書遺言を作ることをおすすめします。

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