遺言とは
遺言とは、被相続人が、主に自己の財産(相続財産)について、自分の最終意思を死後に遺したものであり、遺言は、遺言者による単独の法律行為でもあります。
被相続人としては、ご自分の財産を、誰に、どのような形で残すかということについて、自分自身で決めたいと思われるのは、至極当然のことだと思われます。
具体的には、遺言者が自分の死後に、その財産を誰にどのような割合で残すのかを決めたり、自分を虐待するなどした相続人を廃除したり、婚外子を認知したり、先祖のお墓を誰に守ってもらうかを定めたり、などがあげられます。
遺言として自分の意思を残しておくことで、自分の死後、相続人間で無用な争いが生じることを防ぐことができるのではないでしょうか。
そして、遺言は『自身の尊厳を守る=自分のことは自分で決め、自分らしく生きる権利の最期の証明』 だと思います。
遺言書の種類
遺言書には、主に自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言といった種類があります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は被相続人が自筆し、公正証書遺言は被相続人の意向をもとに公証人が作成する形式です。
遺言書は基本的に被相続人や公証人でなければ作成することができず、行政書士が代わりに作成することはできませんが、遺言書の書き方の指導や文案作成などのサポートを行えます。
公正証書遺言や秘密証書遺言の作成には証人の存在が不可欠となりますが、行政書士がその証人を担うということもできます。
遺言は、法定の要件を満たした遺言書が作成された場合に、初めて遺言としての法的効力が認められます(民法960条)
そのため、遺言の内容を実現させるためには細心の注意を払って事前調査を行い、作成後には慎重に内容を確認する必要があります。
遺言書の法的事項(法律上の効果が生じる事項)※民法
1. 相続に関する事項 | ・被相続人の排除及びその取り消し(893条、894条2項) ・相続分の指定又は指定の委託(902条1項) ・遺産分割方法の指定又は指定の委託(902条2項) ・遺産分割の禁止(908条後段) ・共同相続人間の担保責任の定め(914条) ・遺留分侵害額の負担者の指定(1047条1項2号但し書き) |
2. 財産処分に関する事項 | ・遺贈(964条) ・遺贈義務者による遺贈目的物等の引渡方法の指定(998条但し書き) |
3. 身分に関する事項 | ・認知(781条2項) ・未成年後見人の指定(839条) ・未成年後見監督人の指定(848条) |
4. 遺言執行に関する事項 | ・遺言執行者の指定又は指定の委託(1006条1項) ・特定財産に関する遺言の執行方法の指定(1014条2項) ・遺言執行者の復任権に関する意思表示(1016条1項) ・遺言執行者の指定(1006条1項) |
5. 配偶者居住権に関する事項 | ・配偶者居住権の遺贈(1028条1項2号) ・配偶者居住権の存続期間の指定(1030条) |
6. その他の事項 | ・祭祀主催者の指定(897条1項但し書き) ・特別受益者の相続分に関する意思表示(903条3項) |
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、自分(遺言者)が、遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして、押印をする遺言書です。
遺言書の本文はパソコンや代筆で作成できませんが、民法改正によって、平成31年(2019年)1月13日以降、財産目録をパソコンや代筆でも作成できるようになりました。
なお、財産目録は、預貯金通帳の写しや不動産(土地・建物)の登記事項証明書などの資料を添付する方法で作成できますが、その場合には、全てのページに署名と押印が必要になります。
1.自筆証書遺言の長所
- 作成に費用がかからず、いつでも手軽に書き直せる。
- 遺言の内容を自分以外に秘密にすることができる。
2.自筆証書遺言の短所
- 一定の要件を満たしていないと遺言が無効になるおそれがある。
- 遺言書が紛失したり、忘れ去られたりするおそれがある。
- 遺言書が勝手に書き換えられたり、捨てられたり、隠されたりするおそれがある。
- 遺言者の死亡後、遺言書の保管者や相続人が家庭裁判所に遺言書を提出して検認※の手続が必要になる。
- 遺留分を考慮していなかったため、相続が争族になるおそれがある。
※遺言書の検認には行政書士が携わることはできません。
検認は家庭裁判所を介して行われるため、書類作成を行うことも認められていないからです。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公正役場で証人2人以上の立会いの下、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べて、公証人の筆記により作成してもらう遺言書です。
※聴覚や言語機能に障害のある方でも公正証書遺言をすることができます。
1.公正証書遺言の長所
- 法律知識がなくても、公証人という法律の専門家が遺言書作成を手がけてくれるので、遺言書が無効になる可能性が低いです。
- 勝手に書き換えられたり、捨てられたり、隠されたりするおそれがありません。
- 家庭裁判所での検認の手続が不要です。
2.公正証書遺言の短所
- 証人2人が必要となります。
- 費用や手間がかかります。(遺言書の作成費用は、目的の価額に応じて設定されます)
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で証明してもらう遺言のことです。
遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をし、これを封筒に入れて、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印をした上、公証人および証人2名の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申し述べます。
公証人が、その封紙上に日付および遺言者の申述を記載した後、遺言者および証人2名とともにその封紙に署名押印をすることにより作成します。
公証役場で手続きが終わったら、遺言を持ち帰り自分で保管します。
秘密証書遺言は自筆証書遺言と違い、代筆が可能でパソコンでも作成できるため、手が不自由な人でも作成することができますが(署名は自分で手書きすることが必要)、できるだけ自筆で書くことをオススメします。
秘密証書遺言が無効になってしまったとしても、自筆証書遺言として有効になる可能性があるからです。
1.秘密証書遺言の長所
- 遺言の内容を秘密にしておきながら、自筆証書遺言の問題である偽造・変造等を防ぐことが出来ます。
- 封がしてありますから中身を誰かに見られる心配はありません。
- 封と押印がしてありますから、中身が他人によって偽造・変造される心配はありません。
- 遺言の有無に関しても相続人であれば公証役場に問い合わせることができます。
2.秘密証書遺言の短所
- 公証人が作成するのは遺言書の封紙面だけなので、内容に関する不安が残る場合もあります。
- 公証役場には遺言書の封紙の控えだけが保管されるだけなので、隠とくや破棄などの危険性があります。
- 家庭裁判所の検認が必要です。
- 2名以上の証人の立会が必要も必要です。
※秘密証書遺言の費用は定額で11,000円です。証人一人当たり6,000円~10,000円の費用がかかります。
※自筆証書遺言書保管制度※
自筆証書遺言の手軽さなどの利点を生かしつつ、様々な問題を解消するため、自筆証書遺言書とその画像データを法務局で保管する「自筆証書遺言書保管制度」が、令和2(2020)年7月10日からスタートしています。
1.適切な保管によって紛失や盗難、偽造や改ざんを防げる
法務局で、遺言書の原本とその画像データが保管されるため、紛失や盗難のおそれがありません。
また、法務局で保管するため、偽造や改ざんのおそれもありません。それにより、遺言者の生前の意思が守られます。
2.無効な遺言書になりにくい
民法が定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて法務局職員が確認するため、外形的なチェックが受けられます。
ただし、遺言書の有効性を保証するものではありません。
3.相続人に発見してもらいやすくなる
遺言者が亡くなったときに、あらかじめ指定された方へ遺言書が法務局に保管されていることを通知してもらえます。
この通知は、遺言者があらかじめ希望した場合に限り実施されるもので、遺言書保管官(遺言書保管の業務を担っている法務局職員です。)が、遺言者の死亡の事実を確認したときに実施されます。
これにより、遺言書が発見されないことを防ぎ、遺言書に沿った遺産相続を行うことができます。
4.検認手続が不要になる
遺言者が亡くなった後、遺言書(公正証書遺言書を除く)を開封する際には、偽造や改ざんを防ぐため、家庭裁判所に遺言書を提出して検認を受ける必要があります。
この手続きは1ヶ月以上かかりますから、その間は待つ必要があります。
この検認を受けなければ、遺言書に基づく不動産の名義変更や預貯金の払い戻しができません。
しかし、自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、検認が不要となり、相続人等が速やかに遺言書の内容を実行できます。
遺言のことで悩んだときはご相談ください!
いいほし行政書士事務所では、ご依頼者様が希望される遺言の方式に合わせて遺言書の作成支援を承ります。
ご自身が納得できる遺言書が出来上がるまで、しっかりとサポート致します。
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